もっとがんばれるはず、と。

先日、あるイクメンの会の責任者の方とお話をする機会がありました。そのとき、「僕は思春期のころに、母親がとても困った人だと気づき始め、家を出ることにしたんです」というので、てっきり専業主婦かと思いながら話を聞いていると、そうではありませんでした。

「仕事も続けて、しっかりと子育てもやり抜いたという自信が、かえって自分(わが子)に、もっとがんばるべきだと厳しい要求をしてくるので困った。今は、結婚して子どももふたりいるが、孫に対してもおばあちゃんとしてのやさしい受容はなく、嫁に対してもがんばりを求めるので、あまり近づかないようにしている」という息子としての手厳しい母親非難の言葉でした。

このように、仕事をしている、していないにかかわらず、一世代前の母親たちが置かれていた境遇が次の世代の子育てに影響していることは否めません。子育ては、誰かの評価を気にしながらひとりでがんばるものではなく、みんなに助けてもらい、感謝しながら楽しんでいくもの、という心地良い連鎖に変換する役割を保育者が請け負うことから、子どもたちの安心と安定と”のびのび”の保障ができるのかもしれません。

ー 保育でつむぐ 子どもと親のいい関係(井桁容子)  

 

自分自身のがんばりは自信を生む、それは悪いことばかりではないのだけれど、自分を指標にしがちな危うさは自戒をこめつつ。

自分を子どもをはかるものさしにしない、ということのむつかしさを、感じます。