母性愛神話とのたたかい - 大日向雅美
大日向さん自身の「母性愛神話とのたたかい」はここからだそう。 pic.twitter.com/K5aeYAF4Dj
— sharon-lily (@_daisylily) 2016年6月7日
たしかタイムリーにTLでも母性愛神話とか3歳児神話のことも出ていて、借りるつもりなく書架を見ていたらあったので借りた本。
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- プロローグ
- そもそも三歳児神話とは
- 三歳児神話-子どもの立場から
- 三歳児神話をめぐる攻防
- 父にやさしく母にきびしい社会
- 男は仕事、女は仕事も家庭も
- 女の人生狂わす男の母性愛信仰
- 男を不自由にする女の母性愛信仰
- 専業主婦バッシングが始まった
- 敵対する母と娘
- 母親の敵は実は女性
- 母親を追いつめる子育て支援
- 少子化で強まる「子産み」圧力
- 今こそ、母性愛神話からの解放を!
- エピローグ
(ちいさいなかま 2001年4月号~2002年5月号掲載より)
・・・目次を眺めるだけで、おなかいっぱい、濃い予感でした。
目次を読む前に冒頭のご自身の保育へ預ける際のエピソードに目が留まりました。エピローグでも書かれていたように、長年のテーマを続ける原動力でもあったのでしょう。
この本で出てきた学生たちへの講義と学生たちの反応のエピソードはこちらのシンポジウム(同じく大日向先生)の記録の中でも触れられていますし、この講演のことも本で触れています。
本全体を通して、よくある周囲から言われたり、世間として発せられがちな言説が並びます。それを大日向さんは感情的にならずに、でも静かにそのどれに対しても疑問を投げかけます。
さらにやっかいなのは、「自分のやりたいことをがまんしてこそ、母親として成長できる」という考え方です。「なんでもしたいことをすればいいとはかぎらない。人生にはがまんも必要だ。自分がしたいことをぐっとこらえて、だれかのために尽くすこと、それが母親が人間的に成長する道でしょう。そのあたりのところを、今の母親はもっとしっかりと自覚してほしいと思います」という男性もいます。これもまた、子育て中の母親が仕事や勉強をしたいという願いを容赦なく砕く、強烈な切り札といってもいいでしょう。
この男性のいうことはもっともに聞こえます。たしかにそうかも知れないとかたわらで聞きながら、でも、何か腑に落ちない思いを禁じ得ませんでした。
だれかに尽くすことに喜びを覚える心構えはたしかに大切にしなければならないと思います。でも、がまんをしてこそ、母としての成長が得られるというのであれば、男性も父としての人間的な成長を心がける道のりが、今以上に求められてしかるべきではないでしょうか。
何よりも、人に強いられてするがまんは、自己犠牲を強いられているという怨念を招く危険性も少なくありません。
15年近く前に出版された本ではありますが、今の「一億総活躍」「女性活用」「少子化対策」「保育園問題」…それらを並べても「母親」を取り巻く神話は何か変わったのだろうか?と思うくらいに、褪せず渦巻いているとしか思えないのです。